書を楽しむ会 会員稽古作品 [かな書を楽しむ]
八月は 稽古はお休みでした。
九月 最初の稽古日 酷暑の中手習いをした 稽古作品を持ち寄りました。
会員は 言葉選びから 原文のまま、また変体仮名をつかったりして
練習用半懐紙を縦書きにしたり 横書きにしたりして、一紙に歌を一首から数首を
構成など工夫をしながら 手習いをした夏休み中の稽古作品を持ち寄りました。
会員の稽古作品
綴葉装〈てつちようそう〉と呼ばれる平安時代の装丁の冊子本を 自作して
今まで稽古していた百人一首の和歌や俳句などを 料紙の失敗した作品の余白を切り取り
冊子に直接書いた作品 ↓
源氏物語の歌などを今まで書き溜めていた作品などをファイルに収めた作品 ↓
小さなスクラップ アルバム(大創など百円ショップで購入した)に失敗作のお料紙の余白や
新聞の余白をカットした紙に 「秋を詠む」と題をつけ 秋の歌や俳句を書いた稽古作品
同じスクラップアルバムに
以前に帖作品にした作品を 1枚ずつ写真に撮り貼ったものです
たくさん書いてきた作品を 机に広げみんなで鑑賞しながら
一部写真に撮ることができた作品を整理しまとめてみました。
酷暑の中 自由に思いのまま 各人それぞれ工夫を凝らし
楽しみながら稽古した細字作品です。
下の綴葉装(てつちょうそう)とよばれる装丁の冊子本は
東京国立博物館 - ミュージアムショップ (tnm-shop.jp) で買ってきました
糸で綴じられています 表紙 背
稽古照今 [かな書を楽しむ]
先日 NHKの夕方の放送 悩み相談の渋護寺の番組で 僧侶釈撤宗さんの お話に
「古事記に出ている稽古照今」という言葉を夕仕度中耳にし、調べてみました。
稽古照今 とは
昭和33年 岩波書店発行の 日本古典文学大系1 古事記 祝詞 では
古事記 上巻の序に
原文は 漢字ばかりでかかれています。
「雖歩驟各異 文質不同、莫不稽古以縄風猷於既頽、照今以補典教於欲絶。」
「歩驟各異に、文質同じからずとも雖も、古を鑑へて風猷を既に頽れたるに縄し、
今に照らして典教を絶えむとするに補はずということ莫し。」
(ほしうおのおのことに、ぶんしつおなじからずといへども、いにしへをかむがへて ふう いうをすでにすたれたるにただし、いまにてらして てんけうをたえむとするにおぎなはずといふことなし。)
意味は 古を稽みて、今を照らす(いにしえをかんがみて 今を照らす)
かな書を楽しむ私たちにとっての 稽古照今とは
日本には素晴らしい古筆とよばれる平安時代に書かれた古今和歌集が書かれた 国宝の古今和歌集(元永本) 高野切れ、寸松庵色紙、継色紙 関戸本などの肉筆がたくさん残っています。
これら博物館や美術館などで展示されているときに、古筆の本物を鑑賞したり、また平安朝かな名籍選集などを観ながら臨書したりして学んだりしながら それらを今現代における書作品に生かし、 心に響く美しい言葉を 品格高く、余情ある感動をよぶ作品などを目指し、心をも照らすよい書を書くための 稽古と解釈しております。
現代の展覧会壁面大字作品は 漢字かな交じりの書作品でも デフォメル化されすぎて読めないような作品が多く、書かれた言葉の内容を読み解くことすらできない作品に悩んでしまうことがあります。これからの現代の書、未来の書とは?と模索しております。
現在
東京世田谷の 五島美術館で 2020年11月29日まで
平安の書画 古筆の絵巻‣歌仙絵 開催中です ↓
五島美術館 https://www.gotoh-museum.or.jp/event/open/
東京国立博物館では
古筆の展示中です
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2050
書と紙ー平安時代の美しい料紙ー
本館 特別1室 2020年9月24日(木) ~ 2020年11月23日(月)
オンラインギャラリートーク 平安時代の書と紙
↓をクリックして
ぜひ ご覧になってください
稽古照今 から
利休の百首のなかの
「稽古とは 一から出でて十を知る 十から またその一 」この言葉を連想しました。
良寛の歌 貞心尼の返歌に 「つきてみよ一二三四五六七八九の十十とおさめてまた始まるを」という歌へと連想しました。
↓は 深み行く秋の日の稽古日、思い思いの会員の稽古作品です
毎日新聞 11月15日の朝刊に 九州国立博物館長の 島谷弘幸氏 記事
「書の楽しみ」に 造形美について書かれていました。 紹介させていただきます。
「前回のこの欄では、書は調和が一番大切であると説いた。次に肝要なのは、造形である。その書への感性や技術を磨くためには,先人たちによって作りだされた古典の学書が必要である。このため、書を目指す古今の人々は、ひたすら古典と呼ばれる名筆や好みの作品の臨書を繰り返す。書の美を鑑賞する人においても、美しい書、好きな書を探すには、自らの好みに加えて、伝世の最大公約数ともいえる古典を見ることをお薦めしたい。書かなくても見るだけで、書は上達する。眼習いである。ゴルフでも、テニスでも、我流では上達は望めない。いわゆるイメージトレーニングが重要なのである。・・・・・・」
会員稽古作品(四) [かな書を楽しむ]
会員稽古作品(三) [かな書を楽しむ]
残暑お見舞い申し上げます [かな書を楽しむ]
会員稽古作品(一) [かな書を楽しむ]
山頭火の句をはがきに書く [かな書を楽しむ]
小町祭りによせて小町の和歌を [かな書を楽しむ]
伝統のかな書の美しさ [かな書を楽しむ]
市の生涯学習 「かな書を楽しむ」 の講座
今回は 伝統のかな書道の美しさについて
平安時代に書かれた古今集などの文字の美しさを複製本など
見ながら学ぶ を目標に 目習いを主に 臨書の稽古をしました
第一回目は
↓ の 「名寶 古筆大手鑑」 の本 などを鑑賞しながら 昔の名筆を知る
↑ 元永本古今和歌集 複製本から
2回目は 高野切一種の臨書
古筆の中では 高野切 特に第一種が 品格 高く稽古に入りやすいため
この臨書をしました
・高野切(こうやぎれ)は
平安時代後期十一世紀に書写された『古今和歌集』の現存する最古の写本です
和歌の規範として 平安時代には必須の教養とされ 尊重されてきました
日本文学史の研究資料としても貴重であるとともに その書風は仮名書道の
最高峰として古来から尊重され 日本書道史上もきわめて重要な作品です
・名まえの由来
古筆には、それぞれ名前がついています 持ち主や料紙の特徴や発見された場所など
によりいろいろな名前が付けられています
「切(きれ)」とは、完本に対して一部しか残っていないものをいいます
「高野切」の高野は この古筆の一部が高野山にあったことからこの名が付けられました
古今集二十巻を三人の人が分担して書かれているため 筆者ごとにわけられ
高野切第一種、高野切第二種、高野切第三種と呼ばれています
高野切を書かせたのは、藤原頼道 当時の有力者藤原道長の子で
宇治の平等院を建立したことでも有名です
「伝・・・・筆」と書いてあるのは 後の人(江戸時代の古筆家等)がつけ
伝承筆者であって 本当の筆者ではありません
第一種 藤原行経
第二種 源兼行
第三種 藤原公経 といわれています
・料紙
つるつるとした薄い黄色がかった麻紙(まし)に上から全体に雲母砂子が蒔かれていて
装飾のない上品な料紙です
・書風
典雅性が高く かなの優麗性も豊かである
墨継ぎが巧妙で 墨の濃淡・潤渇・墨の流れが美しい
行書きで 一首を二行にかかれている
難しい漢字を入れていないので 明るく読みやすい
用筆は直筆 抑揚開閉が微妙である
潤筆のふっくらした線、渇筆のくいこみような細い線のコントラストが美しい
かな書を経験したことのない方でも 読めなくても見ただけで
美しいと感じられるのではないでしょうか
日本人の美意識の高さによって 千年以上も大事にされてきたこの高野切の
完成度がたかく現代の書家もこれまでもこの高野切れの書を越えた作品を
書いた人がいない といわれています
3回目 は 寸松庵色紙の臨書
紀貫之 寸松庵色紙の複製本から
寸松庵色紙とは
・内容
古今和歌集の 四季の歌を書写
粘葉装冊子本の断簡である
平安時代の 継色紙 枡色紙とともに三色紙と称されている
・筆者 伝紀貫之
・名前のいわれ
武士で茶人の佐久間将監実勝(さくましょうげんさねかつ)が堺の南宗寺の襖に貼って
あった 三十六枚のうち十二枚を所持したので その茶室の名にちなんで「寸松庵色紙」
と呼ばれ 古筆の名葉として尊重されました
・料紙
雲母(きら)で文様を摺り出した中国伝来の華麗な唐紙
・大きさは 縦12.9cm〜13.3cm、横12.3cm〜12.8cm
・書風
典麗高雅 線は勁く緩急自在の変化は見事 散らし書きの絶品といわれる
↓ 受講者の 臨書作品
4回目 御物和漢朗詠集粘葉本の臨書
和漢朗詠集とは
平安中期の歌謡集 二巻
藤原公任(きんとう)撰 1012年ごろ成立
「和漢」とは和歌と漢詩文を指します
漢詩文は 白居易のものが多く588首
和歌は紀貫之 凡(おうし)河内(こうち)躬(み)恒(つね)など216首
計804首を選び 春・夏・秋・冬を揃えた上巻 その他雑を集めた下巻
和漢朗詠集を書いた古筆は
大字和漢朗詠集
関戸本和漢朗詠集
伊予切れ などたくさんあります
御物和漢朗詠集粘葉本もその一つ
藤原行成が書いたと言われ 上下2巻 粘葉本に仕立てられていることから
この名がつけられ明治十一年に近衛家から宮中に献上されて以来
御物になりました
・書風
漢詩は楷書・行書・草書をまぜ 和歌は端麗にして王朝の風格を持つ美しさ
・料紙
色から紙 すべて中国製で 白雲母 または黄雲母で 文様が摺られている
文様は一紙の表面のみ摺られ 裏面はほぼ同色の具引きである
漢字と仮名を同時に稽古出来ると重宝がられ、仮名手本として万人に親しまれ
寺小屋などで読み書きの教科書のように用いられていた
↓ 受講者の臨書作品
日本の書道 特に「な書道」を 世界文化遺産として登録を目指す活動が始まったそうです 平安時代に書かれた古筆の美しさを知ることによって 日本文化の素晴らしさを実感したいと思います
昭和55年発行の 東京堂出版 の
「名宝 古筆大手鑑」 編著者 飯島春敬
は 古筆を勉強する人にとって素晴らしい本だと思います