通りすがりの記憶 [フォト書(短歌)]
今年の歌会始のお題は「野」でした
古事記の中に歌われている 弟橘媛の歌
「さねさし相武の小野に燃ゆる火の 火中に立ちて問ひし君はも」
この歌に詠まれている小野が わが家の近くといわれる説があります
通りすがりに撮ってあったこの小野の野邊の写真を加工し
プリントアウトした和紙に
傘寿の記録「通りすがりの記憶」として
「野」を詠んだ短歌を書いて帖にしてみました
古事記なる野火に遭ひたる相武小野燃ゆる色して初日昇り来
夕映えのさねさし相武の野にたちて傘寿の峠如何に越ゆらん
今は昔「野菊のごとき君なりき」囁かれしは二十の春
秋の野辺そぞろ歩きの楽しさを草花添へて仏に語らん
暮れ泥む小野玉川の岸辺には地蔵かこみて咲く曼珠沙華
相模野の雪降りしきる山寺の大樹の洞の虚空蔵菩薩
吹き荒ぶ野風に遊ぶ枯れ芒ケセラセラよと凹んでる吾に
風まぜの雪野に同化する形の山頭火らしき白鷺一羽
朝まだき小野玉川の岸の辺を霧隠れ行くそぞろなる人
銀座へと弾む道野辺虹立ちぬ今日はよきこときっとあるらむ
タンポポの白き冠毛ふわふわと野遊びしながら旅を待ちをり
古里は印南野といふ万葉歌の地へ帰ることなく半世紀
シカという野口英世の母の文その一途さに涙かすみぬ
秋仕舞ふ煙の如く時流れセピアの記憶枯野となりぬ
春桜夏百千鳥秋佳月冬枯芒吾故郷小野